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fxdondon presents 世界の政治・経済・財政を考察し、外国為替相場を読み解きましょう

欧州の格下げリスク

ユ-ロ圏には様々なリスクが存在します。
おそらく、どこも欧州のリスク要因として挙げていないでしょうが、私fxdondonはドイツの格付けが見直されるものと観ています。
それは、いきなりトリプルAがかつての米国のようにダブルAクラスに格下げされるという過激なものではなく、現在の見通しがまずは「安定的」から「ネガティブ」へ引き下げらることです。
まず、ドイツの格付けの変動を、2011年あたりの欧州債務危機あたりから振り返ってみます。

2012年7月
ムーディーズが最上位格付け「Aaa」のドイツ、オランダ、ルクセンブルクの格付け見通しを「ネガティブ」に変更。ユーロ圏債務危機の先行きが不透明なことを懸念。
2012年8月
フィッチはドイツの格付け「AAA」と見通し「ステーブル」(安定的)を据え置き。ドイツの長年の信用力の強さと2年間の堅調な経済活動を反映していることが理由。しかし、ユーロ圏の規模の大きな国の経済縮小が深刻化し、ドイツが追加拠出を実施した場合には「AAA」格付けが脅かされることも指摘。
2014年3月
ムーディーズはドイツの格付け「Aaa」の見通しを「ネガティブ」から「安定的」に引き上げ。ユーロ圏債務危機リスク低下、財政再建の進行、銀行部門のリスク低下を反映。
2015年7月
スタンダード・アンド・プアーズS&P)は、ドイツの「AAA」格付け維持を確認。見通しは「安定的」。ユーロ圏危機再燃によるドイツ経済へのダメージは大きいが、ギリシャがデフォルトした場合の直接的な負担は吸収可能。
2016年7月
S&Pは、ドイツの格付け「AAA」維持を確認、見通しは「安定的」。英EU離脱による影響は他のEU諸国と比較して限定的であり、格付けへの影響はないとの見方。

現在、ドイツ国債の格付けは最高位にある。
ムーディーズ
Aaa
見通し: 安定的
S&Pスタンダード・アンド・プアーズ
AAA
見通し: 安定的
フィッチ・レーティングス
AAA
見通し: 安定的

上記の中で、フィッチがドイツの長年の信用力の強さと2年間の堅調な経済活動を反映して最高位を付与してきました。
ところが今回の場合、ドイツの「堅調な経済活動」という概念が当てはまらなくなります。ただ、見通しが「安定的」から「ネガティブ」へ引き下げられてもドイツ国債への影響は微々たるものでしょうが、米国のようにダブルAクラスへの引き下げともなると、ドイツ国債のみならず欧州のソブリンショックを誘発するかも知れません。
欧州連合EU)の格付け最高位トリプルAは、ドイツによって維持されてきたと言えるからです。

ちなみに、英国の格付けですが、
ムーディーズ
Aa2
見通し: 安定的
S&Pスタンダード・アンド・プアーズ
AA
見通し: ネガティブ
フィッチ・レーティングス
AA
見通し: ネガティブ
となっています。
英国の格付けについても、少し振り返ってみましょう。

2019年2月
フィッチ・レーティングスは日、英国の格付け「AA」をウォッチネガティブに設定。合意なき離脱の可能性を考慮し、格下げの可能性を警告。
2017年9月
ムーディーズは、英国の格付けを「Aa1」から「Aa2」に1段階引き下げ。見通しは「安定的」。ブレグジット交渉に伴う政治力学などの影響で経済力が阻害され、財政見通しは悪化。
2016年6月
S&Pは、英国の格付けを「AAA」から「AA」に2段階引き下げ。見通しは「ネガティブ」。EU離脱は将来に大きな影響を及ぼす重要な出来事であり、英国の政策枠組みの予見可能性や安定性などが薄れる可能性を指摘。
フィッチ・レーティングスは、英国の格付けを「AA+」から「AA」に引き下げ。見通しは「ネガティブ」。EU離脱に伴う景気への影響を懸念。
ムーディーズは、英国の格付け「Aa1」維持を確認、見通しを「安定的」から「ネガティブ」に引き下げ。EU離脱に伴う経済成長見通しへのマイナス影響と不確実性を懸念。なお、欧州連合EU)の格付け「Aaa」は維持を確認、見通しは「安定的」。

英国については、格付け会社すべてにおいて、合意なき離脱の場合、格下げを指摘、警告しています。
過去、S&Pだけが2016年6月まで英国の最高格付け「AAA」を維持してきましたが、今まで我慢し過ぎたかのように2ノッチ引き下げに動きました。
今回の合意なき離脱は、英国にとってEUという後ろ盾を失うことを意味しますから、2ノッチ以上の格下げでも不思議ではないでしょうね。