fxdondon’s blog

fxdondon presents 世界の政治・経済・財政を考察し、外国為替相場を読み解きましょう

南ア・ランド相場 予測不能

南アフリカでは3月初めに新型コロナウィルス感染が確認され、都市封鎖措置が先月4月末迄実施された。依然として感染拡大が続くものの、ラマポーザ政権は経済への悪影響を懸念して5月1日付で一部の経済活動再開に動くとともに、総額 5000 億ランド規模の経済対策を発表した。
経済対策の財源は歳出組み換えにより捻出するほか、一部は国際金融機関からの借入によって賄うとしている。昨年度末(今年3月末)時点の公的債務残高はGDP比 64.2%と新興国のなかでも高水準にあるため、過度な歳出拡大は財政状況の急速な悪化を招くことが懸念され、3月末には米格付機関のムーディーズが格下げを実施した結果(Baa3→Ba1)、主要格付機関がいずれも同国を「投資不適格(ジャンク級)」となった。
ムーディーズ社は総額 5000 億ランド規模の経済対策発表に関連して、「財政悪化を招くことで国営企業への財政支援が困難になる」と観ている。財政赤字はGDP比▲13.5%に拡大するとの厳しい見通しを示した。
また、先月初めには米英系格付機関のフィッチ・レーティングスが格下げを実施したほか(BBプラス→BB)、 見通しを「ネガティブ」とするなどさらなる格下げに含みを持たせる姿勢をみせている。
さらに、先月 29 日には米格付機関のS&Pも格下げを実施し(BB→BBマイナス)、その理由として「新型肺炎感染拡大に伴う景気及び財政への悪影響」を挙げ、同国経済が極めて厳しい状況に直面することを指摘した。
これら格下げはあくまで『外貨建て長期債務』の格付けであって、『自国通貨(ランド)建て債務』ではない。政府債務・国営企業の債務が南アフリカランド建て(自国通貨建て)債務なら、まずデフォルトすることはない。日本や米国同様、政府の自国通貨建て債務(国債発行)は『悪』ではなく『善』である。しかし、経済の危機的状況において外貨建て債務は『悪』でしかない。
南アフリカ政府の外貨建て国債(外債)の発行が年々増加しており、確認できるところでは、2018 年末時点で対外債務全体の 4 割近くを占めました。

f:id:fxdondon:20200503125550p:plain



これを南アフリカ全体の対外債務185236百万USDで試算すれば、およそ74000百万USDが外貨建て債務額になります。つまり、740億ドル相当額です。
その外貨建て債務740億ドルに対して、まず債務履行能力として外貨準備高があります。
外貨準備高のピ-クは55058百万USDでした。つまり、550億ドルです。それが、現在確認されている外貨準備高は524億ドルです。おそらく、対外債権国側が既に南アフリカから資金逃避したのが26億ドルだと推測できます。

f:id:fxdondon:20200503125647p:plain


元々、外貨建て債務740億ドル(推測値)に対して、準備高は550億ドルしかありませんので190億ドルが不足しています。南アフリカ政府もまんざらバカではありませんので、金融危機通貨危機などに備え、中国と 43億ドルのスワップ協定、BRICS と 100 億ドルの緊急時外貨準備金基金を契約しています。これは緊急の借入枠を設定しているもので、追加の対外支払い能力と考えていいでしょう。しかし、それでも50億ドルが不足しています。
南アフリカ中央銀行は、かつてランド安が進むと為替介入を実施していました。ある種、管理固定相場制と言えるものでした。まぁ、今の中国と同じようなイメ-ジでしょう。
しかし、南ア中銀はその為替介入をいっさい行わない方針を打ち出しました。完全変動相場制を宣言したことになります。実際のところは、為替介入して外貨残高を減らしてしまうと、商取引などの外貨実需で外貨不足が生じてしまうからでしょう。中銀は介入で外貨準備を取り崩すことがなくなったので、外貨準備も順調に積み上がっていくようになりました。
ただ、こうした公表されている対外債務などのデ-タも、為替レ-トの変動においては予測不能です。現在、我々が行っているFX取引は各国で認可された合法取引業者ばかりではありません。海外FX業者には非認可のハイレバレッジの取引が可能な業者がかなりあります。俗に、その勢力は『通貨マフィア』とか『通貨ゲリラ』とか言われますが。
そのハイレバレッジ違法外貨取引の元金が1億ドル集まったとして、500倍のレバレッジで取引されると500億ドル相当の南アランドの取引が行われることになります。中には、レバレッジ888倍を謳ったFX違法業者も存在します。
先日、原油先物取引で1バレル▼40ドルというのがありましたが、それもこのハイレバレッジ取引が生み出したものと考えられます。
『通貨マフィア』とか『通貨ゲリラ』というのは、元々ランド建て資産を保有していて、それを売るものではありません。あくまで莫大な空売りを仕掛けて、後日買い戻すという投機的行動ですから、一時的にランドは非常識的な暴落、その後は常識的なランド安値に収まります。非常識的な暴落のピ-クはセリングクライマックスとか呼ばれますが、それは誰しも予測不能で、『通貨マフィア』とか『通貨ゲリラ』の気分次第、悪乗り次第と言えます。「さすがに、レ-トがここまで跳ね上がる(蹴落とされる)ことはないだろう」なんて想像を我々は勝手にしますが、そんなものは通用しません。テクニカル?そんなものも通用しません。前回の、今となってはちっぽけな金融経済危機のリ-マンショックですら、テクニカル分析に頼ったFXトレ-ダ-が数多く消え去りました。我々FXトレ-ダ-の弱点は、『一瞬だけの暴落暴騰』です。セリングクライマックス時ではたった数分間の暴落暴騰で、大儲けした者と大損した者とに分けられてしまいます。
私fxdondonは現在、USD/ZARやEUR/ZARでZAR売りを構えていますが、ポジショント-クとは別にしても、間違ってもZAR買いをしたいとは思いません。まぁ、落ちるナイフをどうしても掴みたい人は、どうぞZARの買い持ちを。

 

テクニカルなど通用しないのは承知の上、無理やり線を引っ張ってみました(笑) ①は常識的相場、②は非常識相場、です。

USD/ZAR 直近推移

f:id:fxdondon:20200503125953p:plain

テクニカル

f:id:fxdondon:20200503130023p:plain

 

EUR/ZAR 直近推移

f:id:fxdondon:20200503130109p:plain

テクニカル

f:id:fxdondon:20200503130157p:plain